ハイハイで散歩中

面白いと思ったものをただただ紹介したり、またはただの雑記に成り果てそうです。

ハイハイで散歩中

春の兆し、萌芽、新しい風

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先日、出かける際に、アパートの隣人の部屋のドアが開きっぱなしになっていて、横切る時に何気なく覗いてみると、中は綺麗に空っぽになっていた。

近くにリフォーム車が止まっていることを考えると、数日前にいつの間にか引っ越ししていたらしい。

開け放された部屋の床は、ワックスがかけられたのか、綺麗に光っているように見えた。

その空間は、なにかが始まりそうな、まさしく春に相応しい、そんな新鮮さが漂っていた。

しかし一方で、誰かに押さえられているのでもなく、ストッパーの力によってどこか殊勝に開き続けているドアと、まるで世界から切り離されたかのような周囲の閑静さ、それら要素が加わった生活感のない真新しいだけの部屋は、少しだけ物悲しく、感傷的な気分にさせた。

今まで確かに存在していたのに、それは突然途方もない無になってしまった。

その有から無への予期せぬ変化自体に、感傷的にさせられているのかもしれない。

どうやら春の兆しは、ウキウキさせる萌芽の新鮮さと、その変化に潜む物悲しさを運んでくるようだ。

と、隣人の消失を契機にどこまでもセンチな文体を現段階まで貫いているが、そろそろ限界らしく、なにかモゾモゾしてくるものが自身を駆け巡ってきたので、一旦ブレイク。

 

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というか、その隣人とはそもそもそんなに親交があったわけではなく、会話という会話はしたことがない。

記憶にあるのは、出かける際にたまたま出くわした時に挨拶するくらい。

あとは、一時期その隣人のドアの真上に大きな蜘蛛の巣が居を構え、それが日に日に勢力を拡大、つまり巣が大きくなってきていて、必ず隣人の部屋の前を通り過ぎなければアパートの敷地から出れない僕は、頭を下げながらそこを通り過ぎなければならなく、少しアドベンチャーな気分で暫く一日の出だしを始めていた。

そんなある日、いつものように出かけようと部屋を出たら、ちょうど隣人がどこからか帰宅する頃合いと重なって、顔を合わせる時間が訪れた。

その時、恐らくこのアパートの住人の中で一番蜘蛛の巣のしつこさに困っているであろうその隣人に、同情の意味も込めて、

「蜘蛛の巣やばいですね」と言ったら、

「そうですね」と、少し苦笑し、そのまま隣人は部屋に入っていった。

それが恐らくその隣人との最長の会話である。

だからはっきり言って、その隣人に思い入れなどはない。

どこへ引っ越そうが僕にとってはどうでもいいことなのだ。

だけど思入れはないが、存在のインパクトは大きかった。

僕の住んでいるアパートの壁は極薄もいいとこで、携帯のバイブレーションが鳴ったなと思って確認してみたら何の変化もなく、「あ、隣のバイブか」と間違えてしまうほど薄い。

だから、その隣人がイビキを大胆にかくタイプと知った時は、マジか、と思わざるをえなかった。

しかもその隣人は、かなり手練れのスイマーというか、やたら早い時間から寝始める。

夕方5時くらいからイビキが聞こえた時には、「またまだ成長する気なんだな」と、その飽くなき向上心に感服したものだ。

また、イビキだけではなく、時おり、誰かと戦っているかのような雄叫びも挟んでくるので、戦士属性も兼ね添えた最強クラスであるといえる。

だけども全く悪い人ではないと思うので、ここら辺でしょうもないディスりは控えておこうと思う。

 

壁が極薄で困ったことは他にもある。

最強クラスの隣人とは反対側の隣人さんも少し変わっていた。

その隣人さんはどうやらユーチューバーかニコ動の生主かのゲーム実況を行うライフスタイルを好んでいるようだった。

そのゲーム実況者は色々な時間帯で説明口調な喋りを繰り広げている。

一番困ったのが深夜の時間帯で、僕が就寝する際も実況していた。

また、癖なのか分からないが、窓を開けて実況しがちで、僕が帰宅しようとアパートの敷地内の数メートル前に来た時点で例の話し声が聞こえてきたこともある。

だが、ある日僕が帰宅する際、ドアの前で鍵を探していると、その実況野郎の部屋からシャワーを浴びる音とともに(風呂場は通路側に面して設置されているのでどうしたって出入りの際には聞こえてしまう。因みに僕の両隣は男性です。というか僕は一体誰に弁明しているのだろう)、RCサクセション(いや、タイマーズか?)の「デイ・ドリーム・ビリーバー」をホンイキで歌う声が聞こえてきた。

僕はそれ以来、その実況野郎の声が別に気にならなくなり、もう慣れっこになってしまった。

「デイ・ドリーム・ビリーバー」をご機嫌で歌う奴に悪い奴はいないと思う。

というか、僕は寝る時いつも、ラジオか音楽を聴くためにイヤホンをしているから、そもそもあまり気にならないのだ。イビキも然りで。

 

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まだ他にも慣れてしまったことがある。

僕のアパートはベランダに洗濯機を置く仕様になっている。

その洗濯機の上に、よく猫が鎮座してしまうのだ。

おまけに、あと3匹くらい子猫がアパートの敷地を遊び場にしている模様。

ある真夜中の日など、ベランダが騒がしいと思ってカーテンの隙間から静かに覗いてみたら、元気よく数匹の子猫がじゃれ合っていた。

僕はびっくりさせようと、勢いよくカーテンをシャッ、と開けて猫達を凝視したが、5秒くらい目が合った後、何事もなかったかのようにまたじゃれ合いに戻るのだった。

おまけに子猫の親なのかわからないが、少し大きめの猫が、洗濯機の上に丸くなって動かない。

不快感を抱く人もゼロじゃないであろう村上春樹作品の主人公の口癖「やれやれ」を言いたくなるほど、圧倒的に猫は僕を無視し、好き勝手にやっている。

だけども、そのような全く気を遣ってくれない状況は、人間同士の世界ではあまりお目にかかることができず、僕にとってそういう場所は安心したりする。

だから、もう好き勝手やってくれという感じで、猫の存在も気にならなくなったという訳だ。

 

大家さんも少しお転婆な所があり、ある時帰宅して部屋に入ろうとしたら、ドアに付けられている郵便受けから少し顔を出すように封筒が入っており、開けてみると一枚の便箋が収められていた。

そこには、「真上の部屋の住人に、もう少し静かにするよう伝えておいたので、今後はマシになるだろう」的な内容だった。

僕は全くその話しに身覚えがなく、一体なんのことだよ、と声が出そうなくらい困惑した。

どうやら大家さんは差し出し先を隣人の部屋と間違えているらしかった。

僕は大家さんに間違えていることを伝えたかったのだが、なかなか大家さんと会うタイミングがなく、その間違えの手紙から結構な期間が経過してしまったので、今更言うのもあれなので、未だに報告していない。

今度言ってみようか。

いや、今更言っても変な感じになるだろうから、やっぱりやめておこう。

 

とまあ、このアパートに住んで6年くらいになり、色々なことがあった。

この前更新したので、7年目に突入し、あと1年半くらいはまだ住むつもりでいる。

僕だってこの数年間、周囲の部屋に迷惑をかけていることもあっただろう。

僕は置き傘を持っていなく、出先で雨が降ったらその都度傘を買ってしまい、またそれを捨てられず、僕の部屋のドア脇はビニ傘でいっぱいになっている。

時おりそのビニ傘が綺麗に整理されていることがあって、おそらく大家さんがやってくれているのだと思う。ありがとうございます。

とりあえずは傘を少しずつ減らしていきたい。

あと、家賃の支払いが遅れてしまいがちなのも直したい。

最近暖かくなって、春めいてきた。

さまざまな風が吹いてくる。

それらに耳を澄ましてみる。

ウキウキする萌芽。変化の物悲しさ。

風の歌を聴け。

村上春樹かよ。

ファンに怒られそうだな。

というか、僕も嫌いじゃないし。

今度読み返してみようかな。

そんなこんなで終わりです。

ありがとうございました。