ハイハイで散歩中

面白いと思ったものをただただ紹介したり、またはただの雑記に成り果てそうです。

ハイハイで散歩中

AI(人工知能)と責任①

この前、仕事場の事務所に入る直前、自転車に乗った小学生くらいの女の子が僕の後方を通り過ぎた。(唐突にこんな描写をあえて書くということは、なにかのフラグを立たせるための前フリ以外ないので、はい、このあとなにか起こります)

そして入った直後、がしゃん!と、大きな音が外から聞こえた。
僕は外を覗いてみると、数メートル先で自転車が倒れていて、おまけに激しく泣きわめく女の子の声が聞こえた。
僕は、不謹慎なのだが、少し笑いそうになりながら、その鳴き声の元へと歩みを進めた。
恐らく、「自転車の転倒+幼い子の鳴き声」というセットは、経験上、たいしたことない微笑ましい事故の部類だという認識が僕の中にあるのだろう。
近づいてみると、まるでイタさそのものに激昂するように、「イタい~!イタいよも~!」と、泣き喚いていた。
若い子というのは物凄いエネルギーを放出するものだな。と、感心しながら倒れている自転車を起こした。
はて、僕がこれくらいのエネルギーを放出したのは何年前のことだろうか。
なんて考えは今書きながら思ったことだが、僕はしゃがみこんでいる彼女の膝小僧を見てみた。
その片方の膝は、綺麗にズボンが円形に破けていて、その中心に1センチ程度の赤く滲んだ円形の傷があった。
僕は彼女に、「あー、大丈夫だ。大丈夫。少し血が出てるけど大丈夫。たいしたことないよ」、と、全く根拠のないことを言って励ました。
すると彼女は、「服が破けちゃった~!お母さんに怒られちゃう~!」と、実は真の懸念はそっちなのだ!と、言わんばかりの熱量で持って、泣きながら僕に訴えかけた。
まあ確かに、それで怒る親もいるだろうな、なんて思いつつ、「そんなんで怒られないよ、大丈夫だよ」と、またまた無根拠な、会ったこともないその子のお母さんの素性を勝手に捏造しつつ、一抹の懸念を抱えながら、再度その子を励ました。
さて、次の一手をどうしたものか。
泣き喚いているこの子にどのような処置を施せばよいのだろう。
だが、その懸念は瞬く間に消え去った。
なんのことはない。その泣いている当人が僕に指示を出してくれた。
「真っ直ぐ行った所の公園で私の友達が遊んでいるので、呼んできてもらえませんか?」
泣き叫んでいたわりに至極冷静な彼女に僕は、分かった、と言って公園に向かった。
彼女が言ったとおり、公園には遊具で遊ぶ子供達がいた。
僕は4、5人くらいの子供達に、不審者と思われないかの不安を持ちつつも、事情を話した。
すると話した途端、まるで今からイベントごとでも始まるかのような勢いで、僕の脇をすり抜け、彼女の元へと駆けて行った。
マジ子供エネルギーハンパねぇ。と驚きながら、僕もあとを追った。

彼女の元に戻ると、心配する子や、お祭り騒ぎの子に囲まれながら、泣きながら携帯電話で話す彼女の姿があった。
「お母さん~!怒らないで、ね~!服破けちゃったの~!怒らないでね~」
もはや悩みの種は完全に服が破れたことに対する母親からのお叱りと化していた。
僕は改めて携帯電話の利便性に感心しながら、再度一抹の不安を抱えそうになっていた。
だが、そんな気持ちを察したのか、表面上は泣いているが、実は冷静沈着現実主義者のその現空間上のヒロイン、ズボンの膝小僧破け子ちゃんは、僕に次の指令を出した。
「そこの角を曲がって、真っ直ぐ進むと友達のお母さんがいるので呼んできてもらえませんか?」
イエッサー。
僕は駆け足で呼びに行った。
すると角を曲がったところで、誰かの友達のお母さん然とした女性が、ちょうどこちらに駆けてくるところだった。そしてその隣には子供がいて、どうやら僕より先に仕事をこなした奴がいたようだった。
そのお母さんは僕の顔を見て、一瞬怪訝そうな顔をしたのを見逃さなかった僕は、なにも不味いことはしていないのにも関わらず、なにかを弁明する口調でそのお母さんに事情を説明した。
そのお母さんは、うんともすんとも言わない、微妙な表情のまま、僕と一緒に彼女の元に駆けて行った。
まだワーワー騒いでいる子供達一行の中心に位置している悲劇のヒロインは、友達のお母さんに第一声、「服破れちゃって、お母さんに怒られちゃう~!」だった。
君のお母さんは服飾関係の仕事でもしているのかどうか聞く代わりに、僕らのこれからの未来の話を振った。
すると、どうやらヒロインの彼女が先ほどの携帯でお母さんに話しをつけていたのか、一旦その友達のお母さんの家で応急処置をすることが直近の決定事項らしかった。
そして由々しき問題は、彼女をどうやって、そこから100メートル強ある友達のお母さんの家に運ぶかだった。
彼女は足を動かすと思い出したように、「イタイ~!」というので、まず自力での歩行は無理だった。
僕はこういう時の、テンプレートというか、定番ネタというべきか、男だったらとりあえずとっておくべき行動を知っている。
僕は言った。
「僕がおんぶしていきますよ」
僕はまず第一に友達のお母さんの表情を確認した。
この数分間、決して僕に対する疑念「さっきからいるこいつ誰やねん」という雰囲気を崩さなかったお母さんの表情が気にならないわけはないだろう。
「まあ、出しゃばりのこいつの言うことをきいておかないと後が面倒だ」、と思ったかどうかは知る由もないが、男を立てる女性ならではの処世術で持って、「じゃあそうしてもらおうか」と、友達のお母さんは言った。
少しだけ表情が和らいだように見えた。
僕はその隙を突いて、一気に弛緩させようと、「少し恥ずかしいかもしれないけど、そこにある仕事で使う台車でガコガコ運んでいく手もありますけどね」
今思えば、微妙なユーモアだったかもしれない。
言い終わりの最後に、「子連れ狼的な」、とか付けていればこの男は冗談を言っているなと思ってくれたかもしれない。というか、僕自身、半分冗談で半分マジだったので、あまり良い結果を呼ばなかったのは当然といえば当然か。
その証拠に、ある一人の子供にいたっては、「確かにそれもありだね」と、僕の意見を採用しようとしていた。
だが、その子供が「確かにそれもありだー」と、言い終わるか終わらない内に、友達のお母さんが、「おんぶしてもらおうか」と、かぶせてきたので、僕はすぐさま、「わかりました」と、女の子の前に屈んだ。
そして、女の子を背負い、友達のお母さんの所へと向かった。
そのヒロインの女の子は、どこまでも冷静というか、よくできた子というか、僕におんぶされている最中、ずっと、「大丈夫ですか?」と、自身のことよりも、僕のことを気遣ってくれていた。
そして、家に着き、その子を降ろし、お礼を言われ、みんなと別れた。

そして後日、仕事場の近くを歩いていたら、その子達と出くわし、再度お礼を言われ、肝心のヒロインの女の子は少し足を引きずっているようにも見えたが、元気そうであった。また、僕に不信感を抱いていた友達のお母さんも、和らいだ表情で僕にお礼を言ってくれた。
そして、先日も、仕事場の近くで子供達を見かけた。
奇遇が続くなと思ったのだが、実はそうではなく、元々その子達は近くに存在していて、その子達の存在を認識(認知)したことで、世界が広がったというか、見ている景色が変わったというか、つまり、僕の世界が更新されたということなんだと思う。

とまあ、そういうことが最近あった。

いや、なんの話しだ。「AI」全く出てこないじゃねーか。

実はこれは前置きで、思ったより長くなってしまったので、本題は次回に書きます。

ありがとうございました。