あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いいたします。
昨年末、もはや年の瀬の風物詩となった漫才の大会、M-1グランプリ2019が行われ、ミルクボーイが見事グランプリに輝いた。
僕が特に気になったコンビは、ファイナルラウンドまで残った3組の中の1組、「ぺこぱ」である。
ぺこぱの特徴的な点といえば、やはり、ツッコミ松陰寺太勇の、「ツッコミそうでツッコまず、ボケを肯定」するもの、また別の表現でいえば、審査員の松本人志が言語化した「ノリつっこまないボケ」だろう。
勿論、他にも見所は多々ある。
・ナルシスト的ビジュアル系キャラにより本来なら高圧的になりがちなところを、少々マヌケで純真という性質を加えることで、そこに可愛気を発生させているところ。
・同じくだりをやり直すことを「時を戻そう」と表現しキラーフレーズにするところ。
・「知識は水だ。。。独占してはいけない」、「間違いはふるさとだ。誰にでもある」などや、「働き方改革」、「超高齢化社会」、「自動運転」などの、社会性を帯びメッセージを混ぜているところ。
・僕が個人的に好きなもので、ボケのシュウペイが、いきなり舞台のサイドに移動したのに対し、松陰寺が、「えぇ?!、急に正面が変わったのか」と言って空間を使ったメタなボケのくだりをするところ。
・無駄な所作を良い感じで入れているところ。
などなど。
しかし、やはり1番は松陰寺のツッコミ方だろう。
昨年末12月28日(土)のラジオ、オードリーのオールナイトニッポンで、若林が、昨今の社会の風潮と関係させてとても興味深い分析をしている。
若林曰く、「ツッコミ」と「多様性」は相性が悪いらしい。
なぜなら、「ツッコミ」は、あたかも答えが1つしかないように振る舞うからだ。
「〜じゃねえよ!」「〜それは違うだろ!」等々、自分の主張がまるで正解かのように「決めつけ」てしまう。
こうなると、様々な価値観を受け入れあっていく「多様性の社会」とは、明らかに折り合いが悪い。
なぜ、若林がこのことに引っ掛かったのかと言えば、バラエティ番組のMCをやることが多くなったのがきっかけだとのこと。
つまり、価値感が多様化した社会で、番組MC、またはツッコミという役割を、どのように全うすればいいか悩んでいた経験があったというのだ。若林的には、多様な価値観のある番組では、「ツッコマなくていい」という答えに行き着いたらしいが。
しかし、そこで、「ぺこぱ」の登場である。ぺこぱの漫才を見て、若林は腰を抜かすほど驚いたらしい。こんなツッコミ方というか、処理の仕方をする人が出てくるなんて、と。
ボケに対して、最初ツッコムと見せかけて、ツッコマず、そのまま受け入れ肯定する。
つまり、「ツッコムとみせかけてツッコマない」の部分で緊張と緩和を使用し、笑いを生み出す下地を整えたところで、「そのまま受け入れ肯定」するというオチフレーズに着地させて、多様性を侵害することなく、笑いを生み出すことができる。
若林は、この多様性を肯定しつつ、なおかつ笑いにしている漫才を見た時、「この松陰寺という子はなんて優しい子なんだろう」と思い、泣きながら笑っていたらしい。
つまり、このぺこぱの漫才はすごい発明だということだ。
ツッコミの、時に独り善がりで、多様性を侵害してしまう性質がもたらす現象もそうなのだが、それと少し似たもので、僕が気持ちの悪い違和感を抱く現象が他にもある。
それはバラエティ番組などでよく見かけるのだが、その場の笑いのために、少し盛った言葉の表現を使用し、笑いをいただくというものである。
なにを細かいこと抜かしてんだよ、このタコ、笑えれば良いだろうがバラエティ番組なんだから。
と、思われるかもしれないが、僕はこれがどうも気になってしまうのだから仕方がない。
例えば、それほど大きくないものに対して、「めちゃめちゃ大きいやんけ!」とか、それほど汚くないものに対して「ごっつ汚いやんけ!」みたいに、大げさに言って、あたかもそれが正しいかのようにその場に笑いを生み出し、そして番組全体もそれに同調し、その一つの方向に進んでいく。
僕はお笑いは好きだが、そのような光景を見ると、途端に辟易してしまう。
なんというか、そのような行為は、言葉を乱暴に扱っているように思えてしまう。
その一瞬を、無為に流してしまっているというか、その瞬間を空虚なものにしてしまい、その瞬間を生きていないような、そんな感覚に陥る。
かくいう僕も、ウケを狙って、たまにそのような行為に走りそうになる時もあれば、実際そのまま走ったことだって何度もある。
その時にその空虚さを感じ、そして、これが日常的に癖付いてしまうと、自分がどんどん擦り減っていくような気がするし、この先、あまり良い歳の取り方はしないんではないかと直感的に思ってしまう。
だから、なるべくそのような行為はしないように気を付けていきたい。
まあ、特にこの記事にオチなどないのだが、とにかく、若林のぺこぱの分析は新鮮でハッとさせられるものがありました。
その若林の分析を聞いた後の、「難しくて分からない」と言った春日の反応も面白かったな。
終わります。ありがとうございました。