先日YouTubeを観ていたら、映画「マザーレス・ブルックリン」のブルーレイ&DVDの発売広告がやっていて、まだ観ていなかった僕は、なんだか面白そうな雰囲気の映画だし、なにより音楽がそそられるなと思って調べてみたら、主題歌をレディオヘッドのトム・ヨークが担当しているという事で、これは観るべきっしょと思い、早速Amazonプライムで観ました。(本作は米・2019年11月、日本・2020年1月に公開されました)
映画のあらすじを無茶苦茶ざっくり説明すると、驚異的な記憶力を持つ私立探偵・主人公のライオネル(演・エドワードノートン)は、恩人でもある上司のフランク(演・ブルースウィリス)が何者かによって銃で撃たれてしまう現場を目撃する。
悲劇にもフランクは死亡し、ライオネルはフランクを殺した犯人を探し始める。
捜査を進めていくと、フランクの死には政府が関わっていることを知り、ライオネルやライオネルの大切な人が危険に晒されていく。
そして最後にライオネルの取った行動はいかに・・・みたいな感じの、正直よくあるストーリーです。
変わった要素としては、主人公のライオネルが「トゥレット症候群」で、TPO構わず自分の頭に浮かんだ言葉を叫んでしまったり、人の肩を自分が納得するまで触り続けたりと、チック症状や強迫行為の演出がなされているところでしょうか。
また、この映画はただの探偵ミステリーものではなく、社会的メッセージも織り込まれています。例えば、都市開発には、様々な市の思惑があり、現在既に開発された場所(例えば、『公園』や『橋』、『集合住宅』等)には、先住民(貧困層等)の追い出し、迫害など、市の理不尽な謀略によって完成された経緯があることだったり、しかし、その権力の理不尽な行使は、大局的に見れば人類の進歩に関係していたりするなど、そのようなジレンマの問題だったりが見て取れます。
また、現米トランプ政権への風刺ともとれる様相を呈した映画という見方もできる。
ぶっちゃけミステリー映画というより社会派映画と言った方がしっくりくるのでは、といった印象を受けました。
とか言いつつ僕の観た感想は、そういうミステリーだとか社会派だとかの内容うんぬん、その作品自体の雰囲気、音楽の洗練さの方ばかりに気を取られてしまい、内容は二の次みたいになってしまいやした、という感じです。
監督も務めたエドワード・ノートンは、原作の小説の時代背景1990年代のアメリカを、1950年代の設定に変更し、そして全編にわたり挿入される音楽をジャズ色に染め上げるという、とても渋く、モノクロがかった、「孤独」・「退廃」・「虚無」をイメージさせる50年代の犯罪映画『フィルムノワール』を彷彿とさせる演出を与えています。(『フィルムノワール』などと知った風に書いていますが、以下の記事を参照した次第です)
だから、その雰囲気のこだわりの強さが、内容を凌駕してしまい、結果的に、物語の面白さを遠くに置いてけぼりにされて、そのまま気づけばエンドロールになっていた、そんな僕を許してほしい気分でもあります。
しかし、あの映像の優美なコントラスト、ヴィンテージ感を演出するジャジーなBGMは、本当に魅惑的でありました。
それだけでも観る価値はあるのではと思います。
僕が期待していたトム・ヨークの楽曲も良かったですね。
トムの悲哀に満ちた歌声と、物悲しいピアノの旋律が、主人公の孤独・苦悩を見事に表現していました。また、遠くから聞こえるようなトランペットの音色は、遠近感を演出しているような、よりライオネルの小ささというか、哀愁を際立たせていたように思います。しかし最後には、不思議と優しさや温かさが残るように感じられるのですが。
また、音楽担当者はトムの他に、ジャズ界の巨匠、トランペット奏者でもあり作曲家でもある「ウィントン・マルサリス」、映画音楽作曲家の「ダニエル・ペンバートン」らが参加しています。
この布陣からなる音楽は本当に素晴らしく、この映画のサウンドトラックも発売されているのですが、僕は早速Appleミュージックのサブスクで見つけ出し、仕事のBGMとして心地よく聴いています。まあその際、映画のストーリーが想起されることはあまりないのですが(笑)
本作品、批評家達からも結構な高評価をいただいているみたいなので、勿論作品自体を観ることをお勧めしますが、正直、サウンドトラックだけでも聴いてみる価値はあると思います。
でも、昔ながらの探偵映画を味わいたい人にもお勧めですし、エドワード・ノートンの演技を堪能したい人にも勿論お勧めです。
とにかく僕としては映像美と音楽が大変良き!といった感じです。
興味のある方は是非観てみてください。
それでは!