ハイハイで散歩中

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平野紗季子著「生まれた時からアルデンテ」-言語センスやばし、とにかくオモロい。

生まれた時からアルデンテ (文春文庫 ひ 31-1)


この前、平野紗季子さんの「生まれた時からアルデンテ」を読んだ。

結論から言って、とても面白かった。

平野紗季子さんは、フードエッセイスト、ラジオパーソナリティ、レーズンサンド界に革命を起こした「(NO) RAISIN SANDWICH」の代表を務めたりなど、「食」に飽くなき情熱を注ぎ続けている、「食」の活動家であり革命家だ。

そして、なんといっても平野紗季子さんの迸る言語センス。

「生まれた時からアルデンテ」。なんだそりゃ、である。

タイトルから引き込まれてしまう本書は、平野さんの「食」への真摯な情熱が存分に収められている。

その情熱は、「孤食」のページからも見てとれる。

平野さんは、「人と一緒に食べると何でもおいしくなる」食事論に意義を唱えている。

それは、女子会の際に行われる味の擦り合わせのツラさや、仕事の打ち合わせ時の食べる口と話す頭の両方働かせることの無理さや、小学校の給食時にみんながアニメの話しで盛り上がっているのに一人鱈のクリームグラタンの味と何度も向き合うも挫折した経験などから、見てとれる。

平野さんは真剣に「食」と向き合い、そして奮闘しているのだ。

だが、決して「共食」も否定しない。平野さんは「食」に対して貪欲なので、色々なものが食べたい。だけど一人だとそれは原理的に制限される。だから、中華料理屋などの円卓を象徴するように「共食」も一概に拒絶できない。

僕が素晴らしいと思ったのが、そのページのまとめに、食事をメインに据える「孤食」、人と人の繋がりの媒介に食事を据える「共食」、食事も楽しむし人との交流も楽しむ「両立」ができること、

「なんだ、ひとりじゃなくても楽しい。そう思える日が来たら私も立派な社会人。」

と語感よく締めているところが天晴れ。
(あと、仕事の打ち合わせで喋りながら食事している時に、「シーザーサラダから永遠にベーコンを落とし続け」るという表現にクスッとさせられました)


平野さんの情熱の矛先は、なにも「食べ物」だけに限定されない。それは独創的な接客をサービスしてくれる「店員」にまで及ぶ。

『ロイヤルホストのホスってホスピタリティのホスですか?』のページで唐突に始まる、ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」の店員「小林さん(仮)」を追い続けたドキュメンタリードラマの章がある。

ファミレスなら「ロイヤルホスト」一択っしょ、の平野さんは、ある時期ロイヤルホストで試験勉強をしていた。

そこで後にストーキングすることとなる「小林さん」と邂逅する。

小林さんの接客は、スマートで丁寧で気が利き、そしてとてもエレガントであったようだ。なにせ平野さんのことを「お嬢様」と呼ぶのだから。

平野さんにとってその接客は、目が死んでいることさえ全てが完璧だった。故に小林さんの接客に魅了されてしまっていた。

しかし青天の霹靂、通っていた店舗が閉店してしまい、小林さんとは離れ離れになってしまった。

その際の平野さんの文章がまた良い。

「店員と客の関係は実に脆いものだと思う。どんなに足繁く通い店主と深く仲良くなった定食屋があったとしても、彼が店を閉めてただのおじさんになってしまったらその関係性は静かに消えていくものだと思う。彼と私の間には店という都合が必要で、それがない限りは、居心地も信頼も足場がなくて成り立たない。寂しいけど、そういうものなんだと思う。」

『居心地も信頼も足場がなくて成り立たない』という所が特に良いですね。共鳴します。

なんだかんだあってその後奇跡的に小林さんと再会し、衝撃の結末を迎えるのだが、この章は短編小説を読んでいるようで面白かった。


平野さんは恐らく人を楽しませることも好きなんではないかという気がする。

本書は、文章でも楽しませてくれるが、視覚的にも楽しませてくれる。

それは、たくさんの食べ物やお店の写真が掲載されていることや、とあるページでは、ページ全体にデザインが施されており、非常に豊かな気持ちにさせてくれる。適当にパラパラページを繰っているだけでも目の保養になるし楽しいので、本書はエンターテイメントな本だと思う。

平野さんの「食」についての造詣の深さ、向き合い方の真摯さに、あまり食に関心がなかった僕も色々感じる所があった(ような気がする)。

とても面白い本でした。


最後に、平野さんが代表を務めている「(NO) RAISIN SANDWICH」を紹介したい。

平野さんは、レーズンサンドを食べたいが、レーズンが嫌いなのでずっと食べられないでいた。でもどうしてもレーズンサンドが食べたい。

そこでレーズンなしで違う果実を入れて作れないか考え、思いついたのが「ノーレーズンサンド」だった。面白いですね。

「(NO) RAISIN SANDWICH」は主に通販で購入可能だったのだが、今年3月、東京駅に実店舗がオープンした。

僕はよく東京駅を利用するので、食べてみたいと思い何度か足を運んでいる。

しかし、お目当ての定番「ノー・レーズン・サンドイッチ」は、時間帯もあって、いつも売り切れている。

しかし、東京駅店舗限定の「キャラメルバターサンドイッチ」は購入可能。常温で持ち運び可能なので、多く在庫を置いておけるのかもしれない。

だから僕はキャラメルバターサンドを買った。

おいしかった。キャラメルバターがクセになる。僕は味の感想が苦手なので語彙が終わっているが、とてもおいしかった。ぜひ実際に食べてほしい。

あと、詳しい情報は、ホームページを見るなり、スタッフさんの日記を読んで確認してほしい(最新の7月8日の日記にキャラメルバターサンドのおいしさの切実さが画像と共に綴られているのでおすすめです。)。

noraisinsandwich.com


あと、手っ取り早く知りたい人は、YouTubeの、成田悠輔さんがMCの番組「夜明け前のPLAYERS」にゲスト出演しているのでそちらをオススメしたい。

youtu.be

「(NO) RAISIN SANDWICH」のことも紹介しているし、平野さんの「食」への感覚を少しは触れることができるように思うので。

「生まれた時からアルデンテ」、とにかく面白いのでぜひ読んでみてください。

それでは!