ハイハイで散歩中

面白いと思ったものをただただ紹介したり、またはただの雑記に成り果てそうです。

ハイハイで散歩中

他人の傘を盗んでしまう全てのコミュ障、もしくは怠慢ブタ野郎へ

傘を盗んでしまう人は、必要最低限のコミュニケーションスキルが欠如しているか、もしくは、怠慢を餌に肥えたブタ野郎だと思う。

 

先日、買い物を終え、コンビニから出ようとした際、傘立てにある僕の傘を今まさに取ろうとしているおじさんに遭遇した。

申し訳ないが、そのおじさんはいかにも傘を取りそうな風体をしていて、僕の中にある「そういうことしそう」の象徴する像と容易く合致してしまった結果、コンビニから出ようとするチャプターから、本作品の主要キャラであろう傘取りおじさんが登場するチャプターに移行した瞬間に、僕の台詞からこの場面は始まるし、なにを言えば最適かも瞬時に理解することができてしまった。

「その傘、オレの!」

先ほどのチャプター出だしの僕よりもさらに速い理解を示すように、僅かに表情を変えたおじさんは傘を元に戻した。

そのおじさんは、精気を失った、能面のような顔をしていた。

恐らく、傘を取ろうと決意し、傘立てへと足を踏み出した瞬間、凶兆のフラグが立つ音を聞いてしまったのではないだろうか。

だけど、元へ引き返す気力もなく、あの音は自分の聞き間違いの可能性だってある、だって最近耳むちゃくちゃ遠いんだもの。

そんなごちゃごちゃした頭の中を掻き分けながら、傘立てにやってきたのかもしれない。

そういうルートを辿ってきたからこそ、あんなに物分かり良く、すんなり傘を元に戻せたのではなかろうか。

なぜ僕が、こんなに訳知った文章を書けるかというと、高校生の時に同じような経験をしているからである。

その時のことは、以前の記事で書いているので省略するが、僕が馬鹿すぎて、危うく窃盗で警察に連行されそうになってしまった。

www.teheperow.com

その時に、僕は「こういうこと」には向いていないな、と悟ったのだ。いやーほんと馬鹿過ぎたな。

そして、なんとなく、イルミに針を刺され操られてしまったかのようなこの亡霊的おじさんも、窃盗を生業とするには不向きなんではなかろうかと、不意にHUNTER×HUNTERを思い出した僕は思ったのだ。

 

そして次の展開だが、僕に見つかり、その場を去ろうとしているおじさんに、よく咀嚼もせず不意の思い付きを述べた。

「この傘あげますよ。雨もう止んでるし」

僕は本当に傘がいらなかった。雨はとうに止んでいたし、なにより、僕の家には傘が大量にあるのだ。少しでも傘を減らしたいと常日頃から思っている。減らせるならどんな方法だって厭わない(じゃあさっさと適切なゴミの日に出せよって話しだが。まあまだ使えるのでね)。

すると、そのおじさんは、まだ体を乗っ取ったばかりで仕様が分からない寄生獣のようなぎこちない空笑いを浮かべながら、

「えっ、いいの?」

と、小動物のように若干怯えながら聞いてきた。

「はい。いいですよ。持ってってください」

恐らく儒教社会であったならば考えにくいだろう、言葉からは計れない限定的な上下関係がそこには成立していた。

僕は別にマウントを取る気などさらさらなかったが、「傘を恵んでやる」、そのような施しが、年齢に起因する上下関係を暴力的に崩し、そして、ある種の倒錯的快楽のぬるま湯に僕の足を無理矢理浸からせた。

嫌な快楽だ。知らぬ間に罪人に仕立て上げられているような、後味の悪い感覚。こんな風にした罪は重いぞ、おっさん。まあ、僕の思い付きから生まれたものだけどね。

そして、「じゃっ」と言って、無理矢理貼っつけたような笑顔のまま、おっさんはどこぞへ消えていった。

 

僕の行動は正しかったのだろうか。

傘なんてあげない方が良かったのだろうか。

ちゃんと注意してあげて、持ち主に見つかってしまうとえらい面倒くさいことになることを脳天に叩き込ませた方が良かったのだろうか。

先述したが、少なくとも僕は高校生の時に面倒くさい経験をしているがゆえ、(いや、僕が100パーセント悪いのだが)、また、普通に罪悪感に苛まれたくないので、そのような行為からは超超超距離を置くような身体になっている。

いや、あのおじさんだってそのくらいの経験はしているんじゃないのか。しているにも拘らず懲りずにやってしまっているんじゃないのか。

それは金銭的理由からなのか。

いや、仮に金銭が充実したところで、傘程度にお金をかけるなんて真っ平ごめんだ、なんて思っているんじゃないのか。

これはどちらにせよ、お金に縛られている考え方だ。

お金が中心となっている社会・世界の捉え方。

いや、僕だってお金に縛られている。

縛られているが、盗みはしない。傘泥棒なんてマヌケな真似はしない。

だから、盗んでしまうそんな全ての傘泥棒に告ぐ。

盗むのやめよう。取られた人は普通に嫌な気持ちになるから。

さらに告ぐ。

黙って取るのではなく、持ち主に話しかけてみたらどうだろうか。

コンビニの前でその持ち主が出てくるのを見計らって尋ねる。

「すみません。この傘わたしに譲ってもらえませんか」

譲ってもらえなくても、

「あそこの駅まででいいので傘入れてもらえませんか。もちろんわたしが傘持ちますので」

とか、話しかければいい。

勿論、怪しまれたりもするだろう。

そしたら、怪しまれないように次回に備えて作戦を練れ。

話しかけ方はこの方がいいなとか、譲ってくれそうな人に話しかけようとか、誤解が生じないように女性ではなく男性に声かけようとか、ユーモアを交えようとか、雨が止んだタイミングで話しかけようとか、もしくは、譲ってもらう代わりになんかしてあげようと、お金が関わってこないやり方で提案してみようとか。

そう考えるだけで、なんかゲームみたいに思えて楽しくはなってこないだろうか。

別に人と人の間にお金を挟まなくたって、違うやり方で物は手に入ったりする。

現に僕がお金の介入なしにあげてしまっている。それは、僕が傘をなんでもいいから減らしたいという願望と、おじさんの、傘を無料で欲しいという願望が一致したことによって成立した、お金の介入がない、お金の存在しない契約である。

これは、僕と対面することによって、僕と話すことによって、僕とのコミュニケーションを介することで生まれた関係性である。

お金ではなく、コミュニケーションを介せ。

黙って持っていこうとするのなんて怠慢だ。

どうしても傘が欲しいのなら、それに関係する必要最低限のコミュ二ケーションスキルを身につけよ。それがもとで、もっと世界が広がるかもしれない。

お金から解放されれば世界の見え方が変わるかもしれない。

そうすれば、おじさんだって、精気が、活力が湧いてくるかもしれないだろう。

マインドを変えるだけでいいんだと思う。

頑張ってくれ。全ての傘泥棒のみなさん。

僕はそのマインドにはまだ到達できそうにないですが。

 

まあ、傘泥棒さんはこんな記事読まないと思うので、今度傘泥棒に遭遇したら、この話しをしてみようと思います。

ありがとうございました。