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音楽もヤバい作品。浦沢直樹「MONSTER」をアニメで今さら観る。

MONSTER DVD-BOX Chapter 1


今さらNetflixで浦沢直樹さんの「MONSTER」を観ました。

浦沢直樹さんの作品は、「20世紀少年」くらいしか馴染みがなかったんですが、昔から「MONSTER」は気になっていて、Netflixにオススメで出てきたので良い機会なので観てみました。

当然ですが、長編作品なので長かったです。全74話なので、観終えた時には長旅を終えた気分になりました。そんな旅行したことないですが。

でもまさに、この作品は、主人公が色々場所を転々として、長い長い旅のような運命を辿るお話しになっています。

超ざっとあらすじを説明すると、主人公の天才医師「Dr.テンマ」と、頭のキレる容姿端麗カリスマ的存在のマセガキ「ヨハン」の、数奇な運命による、長い長い闘いを描いた、サイコスリラーサスペンスです。

また、サスペンス要素の他に、東西ドイツの冷戦や、ベルリンの壁崩壊、児童虐待等、社会的要素もふんだんに盛り込まれている作品でもあります。

 

もちろん、内容も素晴らしかったですが、僕がやはり感動したのは、「音楽」です。

まず、オープニング曲。

最高でした。決してそこまで派手ではないのですが、静かなる狂気や恐怖や不安を感じさせる、まさに、「MONSTER」の作品の雰囲気を体現させた素晴らしいものだと思いました。

あとアニメーションも素晴らしかったです。

特に好きな部分は、中盤の、悲鳴のようなノイズと共に静かに主要登場人物が軒並み血塗られていくシーンです。ゾクゾクワクワクしました。

 

オープニングやエンディング、そして作品全般にわたる音楽担当を、「世にも奇妙な物語」のドゥルドゥルトゥッ♪ドゥルドゥルトゥッ♪でお馴染みの、「蓜島邦明」さんが担当しています。

「世にも奇妙な物語」の音楽も、子供の頃は、ただただ恐怖を助長するBGMとしか捉えていませんでしたが、今聴き返すと、恐怖の他にも様々な感情や、人生や世界のような壮大なものまで込められているように聞こえ、僕も歳とったんだなと思わされます。

蓜島さんのことに全く詳しくありませんが、この「世にも奇妙」音楽的性質、一筋縄ではいかないサウンドが、「MONSTER」にも現れているように感じました。

 

続いてエンディング曲です。

エンディング曲は、イギリスのバンド・元「JAPAN」のデヴィット・シルヴィアンとの共作(デヴィッド・シルヴィアンは歌唱でも参加)で、しっとりした楽曲になっています。

しかし、ここで超重要ポイントがあるのですが、Netflixでは、権利関係の問題なのか、デヴィッド・シルヴィアンの歌唱が入っていないバージョンが流れてしまうのです。

ただクレジットにはちゃんと「歌/デヴィッド・シルヴィアン」と表記されているんです。

だから、僕はずっと、バックコーラス的に聞こえている女性の声がデヴィッド・シルヴィアンだとばっかり思っていました。

後にYouTubeで違法で、または大枚をはたいて買ったCD「サントラ1」を聴いてびっくりしました。

そっちはちゃんと落ち着いた低い声のデヴィッドの声が入っていて、正直けっこう楽曲の印象が変わってしまいました。

というのは、僕はデヴィッドの声がないバージョンでとても満足というか、しっくりきていたんです。そっちの方が、より静かながらも狂気性が増しているような気がして、これぞMONSTER!とか思ってしまっていました。

しかしデヴィッド歌入の方は、どこか子守唄的になってしまって、狂気さや恐怖感が減退しているように思えてしまうのです。いや、そっちの方が良いのかもしれないし、僕も最初からそれを聴いていれば、デヴィッドの歌声がイカしてる!と思ったのかもしれません。まぁこれから聴き込めばそうなるかもしれないですけど。でももうアニメの物語の一部として聴けることはないので、それは残念でなりません。

 

そして、エンディング曲は、第1話〜32話までは前述した、「蓜島邦明+デヴィッド・シルヴィアン」の楽曲が、第33話〜最終話までは、「作/蓜島邦明、歌/フジ子・ヘミング」の新エンディング曲になっています。

これも超重要ポイントになりますが、Netflixではこの新エンディング曲、クレジットには、「歌/フジ子・ヘミング」と表記されているにもかかわらず、引き続き、第1話〜32話までのデヴィッド歌無しバージョンが流れることになります。マジで残念でなりませんよ。

これも僕は、YouTubeで違法に、そして同じく大枚をはたいて買ったCD「サントラ2」で聴きました。

MONSTER オリジナルサウンドトラック2

とても良かったです。

こちらは、おとぎ話の童話的雰囲気があり、温かみのあるフジ子・ヘミングさんの歌声が、より絵本的な世界観を出しているように感じました。

「MONSTER」と絵本は切っても切れない関係なので、本編を観終わったあとも、より余韻に浸れる楽曲なのではないかと思いました。

また、ピアニストのフジ子・ヘミングさんが歌っている楽曲なんて、後にも先にもこの楽曲しかないのではないでしょうか。蓜島さんのイカれたキャスティングセンスも光る楽曲となっている気がします。

 

僕はたいてい話数の多い長編アニメの場合、オープニング・エンディング共に省略して本編だけ楽しむということをしてしまうのですが、この「MONSTER」は74話全てとは言い過ぎかもしれませんが、ほとんどフルで視聴していたと思います。それくらい、楽曲とアニメーションが良く、飽きがきませんでした。すごいです、蓜島さん、並びにアニメーション担当者さん。

 

オープニングやエンディングだけでなく、その他のいわゆる劇伴もよく、例えば次回予告の牧歌的なギターのアルペジオは毎回癒されると同時に胸踊らされますし、不吉な予感の凶兆のシーンでは、ノイズや不協和音が入り乱れて同じく胸踊らされます。

とにかく、音楽だけでも楽しめてしまう作品が「MONSTER」です。

 

と言い過ぎでもないのですが、勿論、内容も面白いです。

僕が好きな場面は、ラストチャプターの、狂気の沙汰のような村での出来事です。

じわじわ恐怖が襲ってきて、陰鬱で狂気じみてて、ラストにかけてどんどん盛り上がっていく。まるで、映画「セブン」を観ているような気分になりました。雨がいい感じに雰囲気を出していたし。

そして、なんと言っても、物語のぞわっとするラストは名シーンですよね。そのままエンディングへと続くので、ほんとフジ子・ヘミングさんの歌声を聴けなくて悔しいです。

 

また、改めて浦沢さんは、人間の嫌な部分だったり、そのようなムカつくキャラクターを描くのが上手いなと思いました。

いや、嫌な部分だけではないですね。人間の機微などの微妙な感情を巧みに表現し、とても味わい深いキャラクターを作り上げています。

どのキャラクターも(最初は憎たらしいと思っているキャラクターでさえ)、しだいに愛着を感じてしまい、魅力的に思えてくるから不思議です。

 

正直「20世紀少年」より、「MONSTER」の方が好きですね。と言っても「20世紀少年」をそんなに真面目に読んでなかったんですが。

ただ、かなり良かったです。

全74話あるので、時間に余裕がある人ではないと観続けられないと思いますが、かなりハラハラドキドキワクワクするので、興味のある人はぜひ観ていただきたいです。

それでは!