ハイハイで散歩中

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もうカップリングとは言わせない!隠れた名曲達のアルバム「present from you」-BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)

 

バンプのアルバムの中で、特殊な存在のしかたをしているアルバムがあります。それが、2008年に発売された、「present from you」です。

このアルバムは、2007年までに発売されたシングル曲のカップリングを集めた、カップリング集アルバムです。

カップリングだからと言って、なにか物足りない感じがするかといえば勿論そんなことはありません。

全て名曲です。

カップリングという楽曲は、その性質上、えてして控えめな存在になり、シングル曲の影に埋もれてしまいがちです。

バンプもそんな状況を憂いていたらしく、なにかいいブレイクスルーの仕方はないかと考えた結果が、本作誕生の経緯だそうです。(お恥ずかしながら、Wikipediaを参照しました)

本作の楽曲達は、たしかにシングル曲になるような疾走感ある、そのメロディラインだけで存在感を放つような曲ばかりではないと思います。

どちらかと言えば控えめで、おとなしい性質のものが多い印象があります。

しかし、聴いていくと、その性質は見た目だけであり、内実は強い意志が秘められているのが伝わってきます。

僕は、実はバンプの真骨頂はそちら側にあるのではないかとも思っています。

まあつまり、それだけ本作が優れた楽曲達のアルバムであるということであり、前置きが長くなってしまいそうなので早々にこの辺で切り上げて、早速、僕が特にオススメする楽曲を厳選し、今回は7曲紹介していきたいと思います。

 

「present from you」楽曲一覧

1.ラフ・メイカー
2.バイバイサンキュー
3.彼女と星の椅子
4.ホリデイ
5.Ever lasting lie(Acoustic Version)
6.睡眠時間
7.夢の飼い主
8.スノースマイル(ringing version)
9.銀河鉄道
10.真っ赤な空を見ただろうか
11.東京讃歌
12.ガラスのブルース(28years round)
13.プレゼント

 

 

「バイバイサンキュー」

 


まずは「バイバイサンキュー」です。シングル「天体観測」のカップリングですね。

こちらは、タイトルからも察することができると思いますが、旅立ちソングとなっております。

どこか『NHK みんなの歌』を思わせるような、童謡的リズムで、優しい応援歌に仕上がっていると思います。

注目すべき歌詞は、サビの「僕の場所はどこなんだ」という、思春期や青年期に誰もが衝突すると思われる自己の存在意義をストレートに表現したフレーズだと思います。ボーカル藤原の力の入った歌声に、切実さを感じずにはいられません。

また、歌い出しの「明日はとうとう出発する日だ」が、中盤には「明日は『いつも』出発する日だ」に変わっており、新天地へ旅立つ自分の不安を打ち消そうと虚勢を張るニュアンスとも取れるのですが、一方で、いつだって明日は新鮮な物語の幕開けなんだというポジティブな気づきとも取れます。

そして、終盤サビの「僕の場所は『ここなんだ』」という、どこに行ったって自分の場所は変わらない、故郷のここなんだ、というベストプレイスに気づく終わり方をしています。

または、「故郷がベストプレイス」、という解釈よりも、いつだって「自分自身がベストプレイス」という解釈も可能かと思い、ダサいと言われるかもしれませんが、僕はそっちの方がカッケーと思うので、勝手にそっちの方として捉えて聴いています。まあ、時と場合によりますかね。

とにかく、旅立つ時にオススメの一曲です。

 

ホリデイ



次は、「スノースマイル」のカップリングになっている「ホリデイ」です。

こちらは、寝起きソングというか、はたまた誰しもが内面に飼っている怠惰心、言ってしまえばニートソングなのではないかと思います。

歌詞の中の主人公は、歌い出しからも分かるように「失敗しない 後悔しない 人生がいいな」と、自分の思い通りにいく人生を夢見ています。

しかし現実は、「君に貰った花、3日と持たず 枯らしたよ」と、思うようにならない理想と現実のギャップを悲観しています。

僕が好きな箇所は、「巧くいかない 日々がつながって いっそ止めたくなって それも出来ない そんなもんだって 割り切れた訳でもない」、という、断定できない曖昧なフレーズにより、人生のグズグズモヤモヤする葛藤を表現しているところです。

藤原の歌詞は、このような人生や言葉自体の機微に真摯的であるところに好感を持ちますね。

続いてこの主人公は、朝を迎えて起きようとしますが、中々起きれずに、夢の中へ現実逃避しようとします。しかし、なかなか眠ることができずに、そんな考え過ぎてしまう自分に苛立ちながらも、「こんな僕だって 朝を繋いでる」ことに気づきます。

そこから主人公は、今日は、枯らした花や、止まってしまった時計の電池を買って帰ろうと想像し始め、少しずつゆっくり前進しようというポジティブな思考に移行していきます。

最後には、「あと2回寝返りしたら 試しに起きてみよう あと3回寝返りしたら 今度こそ起きてやろう」という歌詞で締めくくられています。

僕は、この主人公は単なる怠け者という言葉では括れない、むしろ真面目過ぎて色々考えてしまう性格が災いして、中々行動に移せなかったり、過度に自分を責めてしまったり傷付いてしまう、そんな真摯的な人物なのではないかと思います。

このようなタイプは日本人の多くが共感するのではないでしょうか。

そして、これはバンプ流の応援歌とも取れ、無理に周り(社会)に合わせなくても、自分のペースでゆっくり進めばいい、そのような優しい締めくくりとなっているように思われます。

曲調も、日常を紡ぐようなリズムになっており、聴き心地良しの、このアルバムの中でもかなりオススメの一曲です。

 

夢の飼い主

 

次は「車輪の唄」のカップリング、「夢の飼い主」です。

こちらは、夏目漱石もびっくりの、「夢」視点での童話のような楽曲になっています。

「生まれた時は 覚えてないが 呼吸はしていた」という歌詞から始まり、とある少女の夢として誕生してきます。

少女も夢の存在に気づき(自覚し)、最初はその夢を可愛がります。つまり、夢に向かって努力するということです。

しかし、徐々に自分の夢をおざなりにし、そもそも自分の夢がなんだったのかを忘れていきます。そして最後には、夢の名前を完全に忘れてしまい、その夢は変わり果てた姿と化し、彼女はその姿を見て涙を流します。

彼女は夢をまるでペットのように扱ってきましたが、夢自身が最後にこう言います。「首輪や紐じゃないんだよ 君に身を寄せるのは 全て僕の意志だ」「ただ名前を呼んでくれるだけでいいんだよ ねえ それだけ忘れないで」

誰しも将来の夢を持ち始めるその初段階は、純粋な気持ち(夢に名前を付ける)から始まるものであり、その気持ちをいつまでも忘れなければそれだけでいい、そのように僕はこの歌詞を解釈しました。

ところでバンプはこのような童謡的な楽曲を創るのが本当にうまいですね。

バイバイサンキュー」のところでも書きましたが、この楽曲も、『NHK みんなのうた』的な優しい一曲となっています。

 

銀河鉄道

 

このアルバムの中でも上位にくるほど好きな楽曲です。初出は「プラネタリウム」のカップリングです。

この楽曲は、人生を電車に重ね合わせた、いわば人生讃歌です。

コトコトと電車が進むような強弱のある、シンプルかつ独特なリズムに乗せて、独り言のような藤原の歌声が淡々と紡がれていきます。

僕が印象的だった箇所は、前半部の、「人は年を取る度 終わりに近づいていく」「動いていない様に見えても 確かに進んでいる」という、電車の中で自分はただ止まっているだけなのに、体は移動している不思議を歌ったフレーズから、最後の「人は年を取る度 始まりから離れていく」「動いていないように思えていた 僕だって進んでいる」という、前半部では人生を終わりから捉えて受動的だった自分というものに対し、最終部の、人生を始まりから捉え、自分だって少しずつだけども確かに進んでいるという能動的変化が読み取れるところです。

また、先述しましたが、強弱ある独特のリズム、独り言のように歌う藤原の歌声により、どこか現実離れした、おとぎ話のような不思議な世界観を感じさせてくれ、それもまた魅力の一つになっています。ぜひ聴いてみて欲しい一曲です。

 

真っ赤な空を見ただろうか

 

 

初出は「涙のふるさと」のカップリングです。

本曲は、いわば夕焼けブルースとでも言いましょうか。とてもリズミカルで聴き心地の良い楽曲になっていると思います。

また、僕はこの楽曲は本アルバムの中で最も哲学的な歌詞なんではないかと思っています。

「溜め息の訳を聞いてみても 自分のじゃないから解らない」や「あいつの痛みはあいつのもの 分けて貰う手段が解らない」、また、「ふたりがひとつだったなら 同じ鞄を背負えただろう」など、自己と他者の存在の相違や、もどかしさについて歌っているような気がします(拡大解釈が過ぎるかもしれませんが)。

さらに歌詞を追い進めると、夕焼けの美しさによって、あなたの微笑みを想起した時、理屈を超え、感動し、勇気を貰ったという内容になっています。

また、1つ(人)ではなく、2つ(人)だからこそ、他者を想う感動があるのであって、それが相手に伝わってるかどうかも解らないが、だからせめて伝え続ける、それに意味があろうがなかろうが、そんなことはどうでもいい、だって夕焼けが、あなたの微笑みが、僕を感動させたから。。。。。つまりは理屈じゃねえってことです。良い曲です。

 

 東京讃歌

 

こちらは、「花の名」のカップリングですね。

本曲も、「真っ赤な空を見ただろうか」同様、軽やかで聴き心地良しの楽曲です。

歌詞は、上京してきた人達の、思うようにならない不満や葛藤などのディスを受け取った、『東京』側のアンサーソングとも取れます。

「勝手に選ばれて勝手に嫌われた この街だけが持ってるよ」、「帰れない君のいる場所を この街だけが知ってるよ 育った街への帰り方を」、などの、ただのアンサーではなく、愛のあるアンサーになっております。

僕も長らく東京に住んでいますが、身につまされるような思いになりますね。

 

プレゼント

 

最後は、本アルバム唯一の新曲「プレゼント」です。

しかし新曲と言っても、楽曲の一部分は、インディーズ期のアルバム「THE LIVING DEAD」の『Opening』と『Ending』で既に披露されており、そのフルバージョンが本曲「プレゼント」になっております。

本曲はラストに相応しい、とても優しい曲になっており、「世界に誰もいない気がした夜があって」「自分がいない気分に浸った朝があって」、のような歌詞の状況の時に聴くと、少し前向きになれるのではないかと思います。

まさにプレゼントって感じですね。

 

終わりに


以上が、僕のオススメする楽曲です。

後半の楽曲紹介の息切れ感は否めないですが(笑)、本当にオススメの一枚です。

紹介し切れなかった楽曲、「Ever lasting lie」、「スノースマイル」、「ガラスのブルース」のアレンジバージョンなども、原曲とはまた違った味わいがあって良いです。その他の曲も勿論良しですので、ぜひ聴いてみてください。

それでは!